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補給物資・・・if [ガンダム(short novel)]

「モルモット部隊として・・・コア・ブースターを送るのが至当なのかどうか?」
ウッディ大尉は、具申した。
「では、大尉はコア・ブースターは至当ではないと?」
「ええ、ジムの方がより実験という意味では相応しいと思います」
「何故そう思うのかね?」
 技術士官は、尋ねた。
「今後、戦力を整備する際に、コア・ブースターは主戦力とはなり得ないでしょう。元々が戦時急造の機体です。そういったモノを、せっかくのモルモット部隊に送る意義は少ないと考えます。更に、コア・ブースターの生残性は、きわめて低い。このような機体に極めて希少性の高いパイロットを搭乗させるのは・・・」
 もとが脱出用ポッドにブースターを取り付けただけで、装甲などなきに等しい。防御は、その高速性能だけと言って良かった。被弾には極めて脆弱であることは誰の目にも明らかだった。
「確かに・・・大尉の言うことにも一理はありますな・・・」
「ふむ・・・だが、これのテストも行わねばならない」
 それまで発言を控えていた将官の1人が言った。階級は、この場にいる者の中で最も高かった。
「大尉の意見を入れるのならば、コア・ブースターは、空母機動部隊の精鋭部隊に配属しても良いのではないでしょうか?コーウェン少佐」
「空母機動部隊?たとえば、ガルバルディか?」
 コーウェン少佐と呼ばれた男はすぐさまに1隻の空母の名前を言った。
「ええ、かの艦には一連の戦闘を生き残った多くのパイロットがおります故・・・」
「確かに・・・」
 コーウェン少佐は、しばし考えた。「コア・ブースターは何機が完成している?」
「初期生産機も入れるならば2個飛行中隊が編成可能です、少佐」
 技術士官の1人が直ちに答えた。「1機ないし2機を運用するよりは余程精度の高い部隊運用記録が取れるでしょう」
「ふむ・・・例の少尉のことを考えれば、あの部隊には、コア・ブースターは向かぬのかもしれないな」
「はい、量産機が、それ以上の性能を発揮できるのか?それとも、それなりの機体を用意せねば戦果を上げられないのか?この実験の方が意義が高いかと・・・」
 RX-78型が、戦場に多数配備できないことは明白だった。だからこそ、量産型としてのRGM-79が、正式採用されたのだ。
 パイロット次第で、その量産型が想定された以上の戦果をもたらすことが出来るなら・・・それは、有益であった。
 それに、旧来型の部隊には旧来型の装備が必要であることの証左になるかもしれなかった。それは、全く別の意味で軍にとって有益なことだった。
「では、ウッディ大尉の進言を受けることにしよう」
 コーウェン少佐は、一同を見回し言った。「第13独立戦隊には、ジムの先行量産機を4機送り、データ集積に当たらせる。コア・ブースターは、新たに飛行隊を編成しこれをガルバルディに配備させることとする」

 こうして、第13独立戦隊には、ガンダムタイプ、ガンキャノンタイプに加えてジムタイプが配備されることになった。

「これで、あの子達の生き残る確率は高まると思うわ」
 マチルダ中尉は、ミデアに搬入されていくブルーの機体を見つめながら言った。第13独立部隊に配備されるジムは、既に正式な配色として決められた赤を基本にしたカラーとは違えてあった。「大変だったでしょう?大尉」
「まあな・・・君の言うことはよく分かる、だから苦労は厭わないさ・・・」
「彼らには・・・生き残って欲しいの」
「だが、君がムリをしてはいけない。君のことを大事に思っている人間がここにいることを忘れてもらっては困る」
「ええ・・・」

 喧噪の中、2機目のジムの搬入が始まった。それが終われば、マチルダは、すぐに飛び立つつもりだった。一刻でも早く、この機体を届けたかったからだ。


・・・ブルーのジム、後に木馬の碧い魔女として怖れられることになるパイロットが搭乗することになる機体だった。
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